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森組芝居はお芝居制作しています。

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森治美の年賀状ギャラリー1

迎春十二支ものがたり(トリで終了)

 干支は全て森治美直筆の毛筆で書かれています。馬と羊は保管していたものが無く、印刷前の校正原稿しか残っていません。 結婚していましたがあえて森治美の名前だけにしています。夫の私の名前が記載していても意味が無い、森さんと連名でも役に立たないからです。森さんの営業活動の一環でもある年賀状や暑中見舞い、残暑見舞い。その大切な郵便物に夫の名前があっては興ざめです。その他に色々な理由がありますが、そういうことで夫の私の名前の記載はありません。
ぼくは虎を猫と思い込んで
じっと動かなくなった奴とは違う
第一、まるで生きているようで今にも動き出しそうと言っても
絵に描かれた鼠は鼠だ
僕は生きている
いま この時をこの地で
お腹を空かしたまま眠りにつくしかない日もあるけど
……生きている
勿論、猫は僕も苦手だが…・…
逃げはしない
ボクが絵だったらとも思わない
平成二十年●元旦
日がな一日
草を喰み反芻を繰り返していると
一体 俺は何をやっているのだろうと哀しくなる
確かにかつては 農場の柵の中で何も考えずにのんびり出来たら
どんなにいいかと思っていた
なのに今は懐かしい
荷車を引いたり田畑に入ったりして働いていたあの頃が
けど たとえこの柵を破り
また違う世界が与えられたとしても……
俺は俺を笑うしかない
平成二十一年●元旦
足の速さではチーターに敵わない
木に登るのはヒョウの方が上手い
ライオンのように
何頭もの雌を従えるなんて俺には出来ない 集団生活も苦手だ
そんな俺に
自慢できるようなことがあるのだろうか……
いや、あろうがなかろうが俺は俺を生きるしかない
ジャングルでも草原でも
たとえ動物園の檻の中でも

平成二十二年●元旦
「あの月が私の故郷なの」
彼女はいつもそう言って笑っていた
だから 彼女の冗談だと僕は思っていた
だって僕たちの兎はずっとずっと昔から山や森や野で暮らしていたからだ
もっとも今では人間と街で暮らすものもいるけど……
「あら 雲にさえ乗れれば帰れるのよ」
そして彼女が高い木のてっぺんから雲へと跳ぶのを見た
それが彼女の姿を目にした最期だった
僕もいつか……あの月に……
平成二十三年●元旦
湖底で微睡んでいると
湖の辺がなにやら騒がしくなった
すると小さな女の子がぶくぶくと僕に向かって落ちてきた
咄嗟に僕は念じた 雷雲よ湧け 稲妻を湖底に と
僕は気を失っている女の子を背に乗せ
稲妻を駆け上がり湖の湖の辺に出た
そしてそのまま
雷雲と稲妻を連れて天空の彼方を目指した
驚愕の声の中に 女の子の声がした
そう 確かに「ありがとう」という声が

平成二十四年●元旦
長い胴に頭と尻尾と……
それが私の体らしい
頭は顔でもある その証拠に目と鼻と口がはっきり識別できる
尻尾は銅の終わりを認識するためそう呼んでいるに過ぎない
そうそう 長い胴も
蛇行する川のようになったり
ぐるぐる巻いた円錐状になったりで……
要するに私は 未だに自分の体について
確信が持てないでいる
けど……それで

平成二十五年●元旦
走り走り 走り抜ける それが俺の本分だった
なのにどうだ 今じゃ女子供を背に乗せ
農場と林道を行ったり来たり
退屈凌ぎにちょっと足を速めると
手綱を持った俺の世話が係が制止を……
けどその日は走った 走り抜けた
林道はいつかコースになり 歓声が沸き上がっていた
突然 女の子の声がした いや鳴き声だ
背に雲のような重さが蘇った
足を緩めるしかなかった 徐々に徐々に そして足を止めた

平成二十六年●元旦

校正原稿のみ所有
丸々と太って見えるのはファファの巻き毛のせい
けれどもそれも春になると
ハサミでバッサバッサと刈り取られ
僕はスマートとは言えないが、かなり機敏な感じになる
そう まさに身も心も軽くだ
ただピンクの肌を人目に晒すことには
今も慣れないでいる 恥ずかしい
救いは僕のその毛がいつか
人々を優しく包むことだろうか

平成二十七年●元旦

校正原稿のみ所有
猿真似と人は馬鹿にするが
人の子も我々猿の子も 父母や兄弟姉妹 周りの者の
言動をまねることから生きていく術を学んでいる
それに「芸術は模倣から始まる」と言うではないか
真似ること
それは学びの始まりで恥ずべき事ではない
真似で終わらせず その先をどうするか
……人も我々猿も

平成二十八年●元旦
日本画では好んで描かれてきました
絵として額縁に収まるばかりか
掛軸や屏風や襖 扇子や団扇にも
そう 絵のモデルとしては
竜や鳳凰などよりも多い筈
そんなことを誇らしくさえ思っています
でも 自由に空をゆき空に舞う鳥たちに
憧れてしまうのです
鳥は鳥 私は私と思いながら

平成二十九年●元旦

森組芝居

主宰:森 治美

住所:東京都内

プロフィール