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森組芝居はお芝居制作しています。

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森治美の年賀状ギャラリー2

迎春十二支の一人芝居

このシリーズは森さんが梅ヶ丘に引っ越し、そして結婚などイベントの多いころのものです。
いつまで拘ってるんだ、順番に。一番だろうが二番だろうが、よしんばビリっけつだろうが
いいじゃねぇか。十二匹か、頭か、羽か……とにかく神の前に馳せ参じ選ばれたんだ。
めでてぇ、ありがてぇと思いこそすれ、だ。
出鱈目はよしゃあがれ。おいらが他人の背に乗って走っただと?
その背から降りて一番だと?
まさか、ねずみのすばしっこさを知らねぇ訳でもあるめぇ。
走ったさ。他人が通れねぇような道なき道を、な。
この足で、息を切らせて、そりゃもう一生懸命に。
ま、いいさ。誰が何を言おうとおいらが一番であることに変わりはねぇ。

平成八年●元旦

気に入らないな。なんだって「さん」付けにするんだ。牛でいいんだよ牛で。
そうだろ?人間は人間、「人間さん」と言うのを聞いたことがあるか?
どうも動物好きと自認する奴ほど、やたら「さん」を付けたがる。
自分だけは俺達のことを同格に見なし
友人だと思っているとでも言わんばかりにな。
けど、俺達に求めることは変わらない。
田を耕させ、荷を引かせ、乳を搾り取り……
仲間同志を闘わせ見物して面白がる。あげくに肉も皮も欲しがるんだ。
いや、だから、上位に立って中途半端な愛をかざすなってことさ。
与えられた境遇の中で精一杯生きる……
牛も人間もないだろ?

平成九年●元旦
私は虎という生きものらしい。
まだ、母の姿もこの世の有様も目にはしていないが、
母の温もり、風や草や土の匂いといったものは感じているし、
母達の話をいつも耳にしている。
近々、自分の目で身の周りの全てをしっかり見られる日が来る。
その時こそ、私が、虎として生き始める日になるだろう。
草原を駆け、木に登り、獲物を捉え……
母達のように今を、明日を信じて……
たとえ空腹を抱えたまま眠る日があるとしても、
私は虎であることを悔やみはしない。

平成十年●元旦
逃げ出して来たんだ。
そりゃもう話にならないぐらい狭い場所でね。
小屋の下を掘って潜り抜けた時には、もうバンザイって気分だったよ。
これで故郷の野に帰れる、あいつに会える、
そう思うとピョンピョン走りながら涙が落ちてね。
けど、帰ってみれば川も緑の大地も失くなっていて・・・
あいつの姿もないんだ。
そりゃ、途方に暮れたさ。いや、これでいいんだって思ったのかなぁ。
小屋で見続けた夢・・・そいつは叶わなかったが・・・。
まっ、また新しい夢をみつけるさ。
どうだい、あの月にピョーンと跳んでみるってぇのは。

平成十一年◎元旦

このあたりで梅ヶ丘に引っ越しています
原稿、印刷物共に無し
馬鹿言っちゃいけねぇ。
例え、空に昇ったところで、それでどうだって言うんだ。
自由に駆け廻われる? じゃ、聞くが…
お前さん、この湖底で駆け廻った事があるのかい?ないだろう。
自分の住む場所も良く知らねぇで、自由も何もあったもんじゃねぇ。
いいかい、湖底だろうが空だろうが、お前さんが龍以外の何者でもないように、
自由なんてものは自分の中にしかないのさ。
ま、どうしても空に、って言うんなら、俺は止めやしないがね。

平成十二年◎元旦

結婚して最初の年賀状です。この頃から夫である
私の名前の記載はありません。
私たちを「嫌いだ」「気持ち悪い」なんていう人は、大袈裟な良い方かも知れないけど、
人生を思うって事がない人よ。
でなきゃ、気が付いていないのよ私達の動きに。だって川の流れを人生に例え
川辺に佇むひとさえ私達の姿に逃げ出すじゃない。
地を這い、岩や木に這い上がる様子は、山を下り野を横切り海に注ぎ込む川の流れと同じなのにね。
そりゃ川の流れみたいに長くはないし大きくもないわよ。けど…同じよ。

平成十三年●元旦

真っ青な牧場なんです。私が生まれたのは
えゝ、そりゃもう見渡す限り、真っ青の
草いきれ?土の?
いえ、そんな匂いはしませんでした。強いて匂いはと言うなら……
青の匂いでしょうか。それから……時折は白の匂いが混じることも
嘘じゃありません
ほら、見てください。あそこ……あそこです
参りましょう。ご案内します。さぁ、私の背に乗って。大丈夫
私にはこんなに白く大きな羽根があるのですもの

平成十四年●元旦

従順でおとなしい……?
そうね、こうして誰とも喧嘩せず静かに草を食んでいるだけですものね。
夕方になればうるさく吠え立てる犬たちに追われ整然と囲いの中にも入るし……
でも、、そんなの嘘。私たちはみんなが望む「らしさ」に徹しているのよ。
与えられた役を演じる役者のようにね。何もかも胸に畳んで
……そうやって生き抜いて来たの。
あっでも、それももうおしまいにするわ……
たとえなにがあろうとも……私……

平成十五年●元旦
似てる? 姿形までそっくり……?
ちょ、ちょっと待ってよ・冗談じゃない。
その言葉、そのままあんた達人間に返すわ。
「猿真似」なんて言葉があるけど、あれは「人間真似」が正しい。
それが順序。どっちが先に生を授かったと思ってるのよ。
それに、真似されたいなら生きるものとしての
大きさ、美しさが必要ね。
尊敬やあこがれを抱けてこそ……でもないか……ま、真似なんか
されず、せず、で生きられるのが一番。

平成十六年●元旦

飛ぶ……飛べる……飛べるんだ!
自分に何度もそう言い聞かせたさ 飛んでもみた
大空に羽ばたく それが自由そのものに思えたんだ
なんで俺達だけが地面縛り付けられているんだ……
同じ鳥じゃないのかって
自由ってものがなんなのかも知らずにね 否 今だって
判っているわけじゃないけど……
飛ぶ 飛べることが自由とも言えないって
ことだけは……違うかなぁ

平成十七年●元旦
「恋人……相棒かなぁ」「ま、子供みたいなものでしょうね」
「家族ですよ やはり」
そう言われれば俺だって悪い気はしない
けど……
それでいいのかって……仲間達にも人間にも
問い質したくなるんだ
俺達は俺達、人間とは違う
違うからこそ、の、何かが……何かいい関係
が……あるんじゃないのか、なぁんてね

平成十八年●元旦

自由に駆け回れる野山……
そんなものがあるのだろうか
あったとして 辿りつけるのだろうか
けど
あると信じて……走り続けるしかなかったんだ
この道と決めて ただ真っ直ぐに
えっ? あったかって?
……まっ 走ってみるんだな あんたも

平成十九年●元旦



森組芝居

主宰:森 治美

住所:東京都内

プロフィール